カンボジア事業紹介「生計を整える」-その2

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

現在、認定NPO法人テラ・ルネッサンスでは、カンボジアで大きく分けて3つのプロジェクトを実施しています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障がい者家族の生計向上支援プロジェクト

前回の記事では、わたしが最もコミットしている③について簡単にご紹介しました。

カンボジア事業紹介「生計を整える」−その1

2017.05.14

今回はこのプロジェクトについて、もう少し踏み込んでご紹介します。ひとつの事例として、国際協力にご関心のある方は特に、お読みください。

 

なぜバッタンバン州カムリエン郡か?

カンボジア北西部タイ国境に位置するこの地域には、大量の地雷が埋設された「K5地雷ベルト」が存在していました。これは、大虐殺を行なったポル・ポト政権以降も続いた内戦時代である1984年後期に、国境を閉ざすために地雷を埋められた地帯です。およそ700㎞の地帯に、200~300万個の地雷が埋設されたと言われています。

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地図のピンが立っている場所がカムリエン郡です。

この地域で生活をする多くの「貧困層」は自身の農地を所有しておらず、地主の小作人として日雇い労働によって日当を稼ぐか、国境を越えて隣国タイでの出稼ぎにより日当を稼ぐ生活をしています。畑地を所有していても、トウモロコシやキャッサバなどの換金作物を栽培する以外に現金収入を得る手段は限られているのです。

 

これは地雷被害者をはじめとした障害者も同様です。しかし、彼ら彼女らの中には、地雷事故によって片手や片足、あるいは両足を失ってしまっている人もいます。そのような人たちは、義足をはめて働くことができても、農作業の労働によって義足と患部が擦れ、その傷を治すためにさらに治療費が必要になるなどのリスクを抱えているのです。

加えて、2015年頃より換金作物の買取価格が下落したことで、農家の収入は激減しました。これは当会でも数年前から危惧していた事態でしたが、これが現実となった今、彼ら彼女らはこの状況を打開するための情報や技術になかなかアクセスできず、借金をしてまで換金作物の栽培を続けているのです。

 

カンボジアは多くのNGOや銀行がマイクロクレジットを提供しており、比較的、借金に対するハードルは低いです。その代わり、月に3%ほどの高い利子がつけられ、一度借りたら借金を返すために新たな借金をする人も少なくありません。そのようにして、雪だるま式に借金が増えていき、担保として居住していた土地を取り上げられてしまう家族がいるのも事実です。そうなれば生活がより一層厳しいものになることは想像に難くありません。

乾燥している大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka
乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

地面に埋められた地雷を含む爆発性戦争残存物の撤去は、ゆっくりとではありますが着実に進んでいます。しかし、例え地雷撤去が完了しても地雷汚染の脅威による影響は大きく、この地域に住む人々は社会経済的に脆弱な環境の中を生きているのです。

 

「生計」の向上

このように、厳しい状況下で生活しているカムリエン郡の障害者家族ですが、決して諦めてはいません。その日の食べ物を買うために、子どもを学校へ通わせるために、明るい未来を手に入れるために、今日も必死に働いています。

テラ・ルネッサンスでは、同地域の障害者家族100家族に対して「生計」向上支援を行います。単なる「収入」向上支援では、彼ら彼女らが生活を改善していくのは難しいのが現実です。

日雇い労働でお金を稼いでも(1日あたり約5ドル)そのほとんどを、食費や借金の返済に使います。自給用の野菜などを栽培せず、換金作物のみを栽培する多くの農家は、お米をはじめとする食材を買って来ざるを得ません。ほぼ毎日、市場へ食材を買いに行く人もいます。その場合、数キロ先にある市場まで移動するためのバイクのガソリン代もかかるのです。

このような状況に対して、こう考えています。

 

いくら収入が増えても、支出がそれ以上にあれば生活は苦しいままです。

逆に、いくら収入が少なくても、支出がそれ以下であれば少しずつでも貯金をしていくことができます。

 

生計向上には「収入を増やす」という視点はもちろん大事です。それと同様に、あるいはそれ以上に「支出を減らす」という視点が大事だと、わたしたちは考えています。

単に、収入向上のための技術を提供するだけではなく、上記のような視点を持つ機会を提供することも、このプロジェクトにおいて非常に重要なポイントとなります。

 

具体的な活動としては、家庭菜園での野菜栽培や鶏、牛、やぎなどの家畜飼育、ハリナシミツバチの養蜂などの栽培・飼育技術訓練の機会を提供し、それらを実践できるような環境を整えていきます。その一環として、隣国タイでの研修があったのです。また、家族の収支バランスやグローバル経済に関するワークショップなどを実施します。

このような形で、少しずつ「収入」と「支出」のバランスを整えていくのです。

また、少しの土地で実践可能な家庭菜園や、家の周りでできる家畜飼育を通して、体の一部とともに喪失しかけてしまった生きがいや自尊心を取り戻すことにも繋がると信じています。これらの複合的な農業技術を提供し、トウモロコシやキャッサバなどの換金作物栽培に依存した生活からの脱却を図ります。そして、自らで管理可能な範囲における持続可能な生活を手に入れられるよう、わたしたちはサポートしていきます。

地雷によって右足を失った男性 photo by Yuki Nobuoka
地雷によって右足を失った男性 photo by Yuki Nobuoka

 

カムリエン郡がひとつのロールモデルとなり、まだ地雷撤去が進んでいない地域が抱える潜在的な課題に対する解決策を、本事業で提示できればと思います。

活動の様子は随時、ご報告していきます。


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