2017年05月

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

以前の記事でも紹介した通り、2017年4月より、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事務所では、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援事業を実施しています。これは独立行政法人 国際協力機構(JICA)による、草の根技術協力事業「パートナー型」というスキームで行なっています。


このプロジェクトにおける重要なポイントの1つが、単なる収入向上支援ではなく「生計」の向上であるということです。その核とも言える考えや、世の中の状況を知る機会の提供として、今週から対象100家族を4つのグループに分け、事業開始に伴うワークショップを実施しています。


主に、
①グローバル経済のリスク
②お金の収支バランス
の2つについて、村の人たちに伝えています。


前回は①グローバル経済のリスクについてワークショップのエッセンスを少し紹介しました。


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カンボジアの農村地域に住む農民の多くは、キャッサバなどの換金作物栽培に収入を依存しています。中国などの企業による買取価格が2015年ごろから下落し、農家の人たちは大きな打撃を受けています。
そもそも、換金作物栽培のために借金をしていた人たちは、見込んでいた収入を得ることができず、さらに借金を重ねて換金作物栽培を続けています。


そのような現状もあることを踏まえた上で、今回はワークショップのうち、②お金の収支バランスに関して伝えた内容をまとめていきます。


積極的にワークショップに取り組む参加者ら photo by Yuki Nobuoka
積極的にワークショップに取り組む参加者ら photo by Yuki Nobuoka

 

支出を減らす


これは本当にシンプルなことなのですが、単に収入のみを上げればよいということではありません。例え収入が増えても、それ以上のお金が出続ければいつまでたっても状況は変わりません。対象者の中には借金を返すために、また借金をしたりする人もおり、この感覚があまり浸透していないように感じます。

逆に、収入が少なくても、支出をそれ以下にすることができればお金を貯めることができます。その方法の1つとして、自給用の野菜栽培や家畜飼育の技術を伝え、実践していくのです。

カンボジアの「貧困層」の人たちは、収入のほとんどを食費に充てています。それは、食べ物をお金で買う以外、手に入れる方法がないからです。狭い土地でも可能な家庭菜園や家畜飼育によって、支出の大部分を占める食費を減らすことにつながります。また、それらを市場等で販売することで、収入を得ることにもつながります。

ワークショップでは、「収入の向上だけが、お金持ちになる方法ではない」ということを伝え、参加者もかなり理解を示してくれました。


 

経済活動に必要なものは・・・


生計を整えていくために、お金が必要なのはもちろんです。しかし、お金を得るためには何をやっても良いのでしょうか。

先日、カンボジアの化粧品 68トンが、偽物だと判明し押収されたという記事がありました。中身はカンボジアで作られた化粧品に、資生堂などの日本企業や、韓国、中国、アメリカ、ドイツやタイの企業製品を模倣した偽物のラベルが貼られていたようです。(参考:Cambodia seizes 68 tonnes of fake cosmetic products


このように、収益を上げるためには何をしても良い、ということではありませんよね。


 

つまり、経済活動に必要なものは「モラル」


彼ら彼女らに伝えたのは、お金は自分でやって来ることは有り得ないということです。お金が歩いてやって来るはずもありません。お金がバイクタクシーに乗ってやって来ることもあり得ません。(この例え話が、1番笑いをとっていました)


お金は「人の手」を通じてやって来るものです。
だからこそ、経済活動を行っていく上で「モラル」は欠かせないのです。


・・・・・・


これまでに紹介した内容は、何もカンボジアの人たちだけに当てはまることではないと思います。


日本にいる人にももちろん、当てはまることです。


シンプルではありますが、お金と関わっていく上でとても大切なこれらのことを、対象者が行動レベルで理解を示していってくれることを願います。


こちらも合わせて。


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こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

2017年4月より、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事務所では、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援事業を開始しました。これはJICA(独立行政法人 国際協力機構)による草の根技術協力事業(パートナー型)というスキームにて実施しています。カンボジア事業の中で、わたしが最もコミットしているプロジェクトでもあります。


この事業に関しては、以前のブログでその背景等を書いておりますので、ご参照ください。


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単なる農業技術の提供による収入向上支援ではないのが、本事業の重要なポイントのひとつです。収入と支出、お金に関する考え方や、グローバル経済のネガティヴ・インパクトを知ることで、なぜ、わたしたちがやろうとしていることが「今」必要で、彼らにとってどのようなメリットがあるのかを分かってもらうことが、かなり大事になってきます。


その第一ステップとして、今週から対象100家族を4つのグループに分け、事業開始に伴うワークショップを実施しています。


何に関するワークショップかというと、


①グローバル経済のリスク


 ②お金の収支バランス の2つです。


ワークショップの様子 photo by Yuki Nobuoka
ワークショップの様子 photo by Yuki Nobuoka

これらを、もう1人のカンボジア駐在職員と、カンボジア人のプロジェクト・コーディネーターが村の人たちに伝えていきます。2回に渡って、このワークショップのエッセンスを紹介します。今回は①グローバル経済のリスクについてです。


 

単一作物栽培の危うさ


「世界がひとつ」になっている現代社会。カンボジアの農村地域も例外ではありません。現地にいて特に感じるのは、換金作物であるキャッサバやトウモロコシの買取価格の下落による経済的損失です。

わたしたちの活動地であるバッタバン州カムリエン郡では、特に熱帯・亜熱帯地域で栽培されるキャッサバの生産が盛んです。皆さんがお好きなタピオカの原料としても知られるキャッサバですが、カンボジアではこれを食べている人をほとんど見たことがありません。


 

アフリカではキャッサバを主食のひとつとして重宝しています。事実、わたしもウガンダに滞在していた時は、毎日のように食べていました。しかし、近年の科学技術の発達によって、工業用でんぷんとして、製紙やプラスチック、あるいはバイオエタノールの原料として利用されるなど、キャッサバはもはや単なる食物ではないのです。特に、カンボジアをはじめ、タイやベトナムにおいては、その主な用途は輸出用の家畜飼料やバイオエタノールの生成です。


キャッサバは、茎を地中に挿すだけで根が張り、そのまま生育するという栽培の容易さに加えて、作地面積あたりのカロリー生産量は他のイモ類・穀類よりも多く、生産効率は非常に高いと言えます。そのため、小規模農家の貴重な収入源としてキャッサバ生産は盛んになっていきました。


 

その地の土壌が貧しくなっていくなどの弊害はありますが、キャッサバ栽培によって現金収入を得られること自体を悪いとは思いません。問題は、広大な土地があるにも関わらず、キャッサバやトウモロコシなどの換金作物のみを栽培し、自給用作物を育てていないという点です。


カンボジアで生産されたキャッサバは、その多くが中国やタイなどの企業に買い取られています。現地のキャッサバ栽培農家の人たちから話を聞くと、2015年までは1kg=7~8バーツ(≒25円)だったキャッサバの買取価格が、2015年以降はその半額ほどにまで下がっているようです。


広大なキャッサバ畑 photo by Yuki Nobuoka
広大なキャッサバ畑 photo by Yuki Nobuoka

 

カンボジアの人たちは、この買取価格をコントロールすることができません。経済的に大きな力を持っている企業から提示された金額に従う以外、ないのです。


借金をして換金作物栽培に必要な土地や農機具、種子を入手し、栽培をしていた農家の人たちは、この買取価格下落によって大きなダメージを受けています。しかしながら、その他に収入を得る術がなく、翌年の換金作物栽培のために更に借金を重ねる人も少なくありません。中には、借金を返せるだけの収入が得られず、担保にしていた土地を取り上げられてしまう人もいます。


 

収入源をひとつだけに頼ってしまうとそれがだめになった場合、文字通り「どうしようもない」状況に陥ってしまいます。


 

このように、経済の自由化、グローバル化によって、カンボジアの元地雷原で生活をする人々も、確実に影響を受けています。


もちろん、ネガティヴな影響ばかりではありません。雇用機会の創出や、製品の低価格化、道路建設などのインフラ整備等、ポジティヴとも捉えられる影響もたくさんあります。


企業というものは(すべてとは言いませんが)綺麗な部分を見せるのが、とにかく上手だなあと常々感じているわたしですが、カンボジアの人たちにとってもおそらくグローバル経済の綺麗な部分しか見えて(見せて)いないのでしょう。


 

伝統的な生活の持続可能性


カンボジアは以前は広大な熱帯雨林が広がっており、自然豊かな国として知られていました。しかし、1970年代後半に台頭したポル・ポト派によって森林は伐採されていきました。活動の資金源として森林を伐採し、隣国タイなどへ輸出することで外貨を獲得していたのです。また、近年の急進的な経済発展の裏側で、自然資源は大幅に減少しています。

独立行政法人 森林総合研究所 REDD 研究開発センターが2012年に発表した報告によると、1965年には73%であった森林率(国土面積に占める森林面積割合)が、1997年には59%まで減少し、近年は特に減少率が大きくなっています。


また、1990年から2010年にかけての森林面積の年間減少率は東南アジア各国で最も大きい国の1つと言えます。(参考:http://redd.ffpri.affrc.go.jp/information/trends/2012/_img/01_country_report_cambodia.pdf


 

経済的な理由によって、たくさんの森林が伐採され、もはや自然との共生は困難となっています。だからと言って、人間の経済活動が与える自然環境への影響を無視してはいけません。


経済の自由化に伴い、欧米や先進諸国などの様々なライフスタイルも流入してきました。例えば、以前だと、カンボジアの人たちは食べ物を持ち運ぶのにバナナの葉を使用していました。土に還るものしか使っていない時代には、「ごみ」を道端に捨てても大きな問題にはなりません。


しかし、今はプラスチックの袋です。放っておいたら溜まっていく一方です。このようなライフスタイルの変化もあり、カンボジアではごみ問題がかなり深刻だと感じます。


 

このように、持続可能な伝統的ライフスタイルが崩壊しつつあり、経済的にも自然環境にも影響を及ぼしていることは事実だと言えます。

 

自信を持つこと


わたしたちのメッセージとしては、「まずは自分たちの文化やライフスタイルに自信を持つこと」を伝えています。


合う・合わないの問題はあると思いますが、どの文化が良い・悪いという判断はできません。いわゆる「途上国」の人たちは、「先進国=素晴らしい」「途上国=劣っている」という思い込みを、無意識のうちに、自分たちで創り上げてしまうことがしばしばあります。


 

大事なことは、無条件に他の文化を受容・批判するのではなく、他の文化から学ぶという姿勢です。


そして、そのためにもまずは、カンボジアの伝統的な生活や文化に対して、カンボジアの人たちがリスペクトを持つことが肝心です。


物事には必ず2つ以上の側面があり、良い部分だけを見て判断をすることは危険なことだと言えます。彼ら彼女らが行動を選択する材料のひとつとして、グローバル経済のリスクについて知る機会をわたしたちは提供しています。持続可能な生活を送ってきた彼ら彼女らが、グローバル経済の荒波にうまく乗って、新たに持続可能なライフスタイルを確立できるよう、引き続き活動を展開していきたいと思います。

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こちらも合わせて。


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こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

カンボジアは、1960年代後半以降に起こったベトナム戦争に巻き込まれ、北ベトナムの重要な補給路であったホーチミン・ルートが通っていたラオスとともに、米軍による爆撃の対象となりました。

ベトナム戦争終結以降も、およそ30年以上に渡る戦闘状態が続き、各派各軍が大量の地雷を使用したことも知られています。

中でも、多くの地雷が埋設され、未だに撤去が完了していない農村地域に住む人々は、道路や水道などのインフラが整備されておらず、都市部に比べると社会経済的な「発展」から取り残されてしまっています。

そんな地域に住む人たちは、現金収入を得るために日雇い労働や、隣国 タイに出稼ぎに行く人が少なくありません。それによる子どもの教育機会への影響については、前回の記事で書きました。

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今回は、そんなカンボジア人による出稼ぎについて、それから、現場に来て改めて考えさせられているもやもやについて書いていきます。

 

妻はバンコクにいる


先日、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援の一環で、対象者にインタビューをする機会がありました。プロジェクトなのでもちろん、終了時には評価をする必要があります。そのために、最低でもプロジェクト開始時における対象者の生活状況は知っておかなければいけません。

いくつかの家庭を訪問して話を聴いている時、地雷被害を受けたある男性の携帯電話が鳴りました。電話に出て2、3分ほど話した後、彼が言い出したのです。

 

「今の電話はタイにいる妻からだ」

 

訊くと、奥さんはタイの首都バンコクに出稼ぎに行っているそうです。

男性はこう続けました。

今週末にカンボジアに帰ってくるから、パスポートの更新の準備をしてほしいと言われた」

3ヶ月ぶりにカンボジアに帰ってくる奥さんは、パスポートの更新が終われば、またバンコクに戻って働きます。

奥さんだけでなく、13歳の息子さんもタイに出稼ぎに行っているとのことです。

 

カンボジア人の出稼ぎ


役所での手続きを踏んで、合法的に海外へ出稼ぎに行く人もいれば、不法入国によって就労をする人もいます。そのため、正確な数は分からないのですが、各種メディアによると海外で働いているカンボジア人労働者は、100万人以上です。

2015年時点、カンボジアの労働力人口は861万人(参考:公益財団法人 国際労働財団ですので、約12%以上が海外に流出していることになります。

また、2012年の世界銀行などの調査によると、カンボジア国外で就労する労働者から国内へ送金された金額が約2億5600万ドルにのぼりました。これは、同年カンボジアのGDPの約1.8%を占めます。

カンボジア人の出稼ぎ先はマレーシアや韓国、中国、日本など近隣諸国が中心となっています。中でも、人気があるのがお隣の国 タイです。

 

わたしたちの事業地であるバッタンバン州カムリエン郡は、カンボジアの北西部に位置し、車で15分もあればタイ国境に着くことができる地域です。それもあって、わたしが接する機会のあるカンボジア人出稼ぎ労働者の多くは、タイに行っているような気がします。

タイでは治安の悪化を懸念してか、2014年頃から不法就労者の取り締まりが厳しくなりました。カンボジアはじめ、ラオスやミャンマー、ベトナムなどの近隣諸国からの出稼ぎ労働者に対しては、パスポートに加えて「ピンクカード」と呼ばれる一時的な労働許可証を取得することで、タイ国内での就労が認められています。

そのピンクカードを取得したカンボジア人は、2016年4月から7月の4ヶ月間だけで30.9万人であったと報告されています。(参考:ミャンマー、カンボジア、ラオスなどのタイ国内労働許可登録者数を発表 | ASEAN JAPAN

物理的に近くて行きやすいというのもひとつの理由でしょう。それだけでなく、タイの最低賃金の高さも魅力的なのでしょう。

 

カンボジアでは、労働職業訓練大臣によって2017年の末までに全業界における最低賃金を設定する意向が示されましたが、現状、縫製業・被服業及び製靴業に従事する労働者に対してのみ、月額153ドルという最低賃金が設定されています。(参考:2017年のカンボジア月額最低賃金は153ドル[政治]

また、カンボジアにおける農作業等の日雇い労働で得られる日当は、村人たちから話を聞く限りでは約5ドルといったところです。毎日仕事があったとしても、月に150ドルほど収入が得られたら良い方です。

一方、タイでは今年3月に、1日8.48ドル(月額約254.4ドル)であった最低賃金が、バンコクと都市部6県において、1日8.76ドルに引き上げられました。これは月額にすると約262.8ドルです。(参考:Cambodian workers see Thai salaries rise , National, Phnom Penh Post

国の「経済発展」の差によって(それだけではありませんが)、最低賃金の金額差がカンボジア人のタイへの出稼ぎを後押ししていることは、想像に難くありません。

 

押し付け?


話を戻します。

先日インタビューを行なった男性の奥さんは、長期間バンコクで働き、収入をカンボジアにいる家族に送金しています。今回は3ヶ月振りの帰国だそうです。「パスポートの更新」と言っていたのでおそらく「合法的な」出稼ぎ就労者なのでしょう。

そして、彼の話を聴いていて思ったこと。

 

価値観の押し付けなのでは?という疑問。

 

というのも、彼の話を聴きながら「家族は一緒に暮らした方が幸せだろう。出稼ぎをしなくても良い環境をつくりたい」と自分は思っていたのです。

しかし、彼はその状況をこう言ったのです。

 

「とってもシンプルなんだ」

 

奥さんは奥さんで、バンコクで働く。彼は地雷事故のために片足を失い、家で孫の面倒をみる。そういう役割なんだと。確かに、日本でも単身赴任の家庭は少なくないですし、現にわたしも親元を離れてカンボジアに来ています。

彼の家族は経済的な理由で、ばらばらで生活せざるを得ない状況です。すでに結婚している娘夫婦や小さな孫も同じ家に住んでいて、家族は一緒に暮らす方が幸せだ、とわたしは思っていました。

 

でも、奥さんはバンコクでよりたくさん働いて、よりたくさん収入を得て、それをカンボジアの家族に送金する。もしかしたら、彼らにとってはその方が幸せなのではないでしょうか。

わたしたちがやろうとしていることは、家庭菜園や家畜の飼育による収入源の多様化で、今日何かやったからといって、明日結果が出るものではありません。ならば、今の生活を維持する方が彼らにとってはベターな選択なのかもしれません。

しかし、長期的に見ると、持続可能な生活を送るためには、やはり今、何かを変えていく必要があります。でもそれはあくまでもこちら側の考えであって、「今」彼らが求めているものとマッチするのでしょうか。彼らの「幸せ」に踏み入ることが許されるのでしょうか。

そんなことを考えていました。

 

「本当に意味のある支援」とは。

 

すぐに答えは出ませんが、ひとつ言えることはこの問いに向き合い続けること。言い換えると、思考を停止させないこと、と同時に、手足を動かし続けること。

現場で直接、対象の人や地域と触れ合えるからこそ、この問いに対する答えに近づけるような気がしています。

時間はかかるかもしれません。

答えはないのかもしれません。

しかし、向き合い続けることを止めてはいけないなあと、そんなことを考える今日この頃です。

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photo by Yuki Nobuoka

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

学生時代に本格的に「国際協力」に携わり始め、インターンシップ・フェローシップとしてお世話になった認定NPO法人テラ・ルネッサンスの職員として、わたしは現在カンボジアに滞在しております。

テラ・ルネッサンスは「すべての生命が安心して生活できる社会(=世界平和)の実現」をヴィジョンに掲げて、「地雷」「小型武器」「子ども兵」という3つの問題の根本的な解決を目指し、国内外における「平和教育」に専門的に取り組む国際協力NGOです。

前回の記事にて、わたしが最も深く関わっている「地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト」についてご紹介しました。今回はまた別のプロジェクトについてご紹介したいと思います。東南アジアやカンボジアにご関心がある方や、国際協力にご関心のある学生・社会人の方に、日本に拠点を置く国際協力NGOのいち活動事例としてお伝えできたらと思います。

 

その前に


現在テラ・ルネッサンスのカンボジア事業は主に3つのプロジェクトで成り立っています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障がい者家族の生計向上支援プロジェクト

上記のうち、今回は②地雷埋設地域村落開発支援についてご紹介します。あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、JICA(独立行政法人 国際協力機構)によるボランティア制度 青年海外協力隊に「コミュニティ開発」という最も人気の高いと言える職種があります。これ、以前は「村落開発普及員」という言葉を使っていたようです。

そのため「国際協力 村落開発」なんかのキーワードでネット検索してみると、関連書籍や論文、協力隊の方のブログなど、たくさんの情報にアクセスすることができます。ぜひ、お試しください。

 

カンボジアが抱える課題


これは、もう一度書いても良いのですが、ほぼ同じ内容になってしまいますので、前回記事をご参照いただきたいと思います。

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上述した「地雷」「小型武器」「子ども兵」という3つの課題のうち、特に「地雷」の問題がカンボジアではメインになっていると捉えています。とはいえ、それが全てというわけではありません。

カンボジアでは、1975年4月17日にポル・ポト率いるクメール・ルージュが首都プノンペンを制圧した後、1979年1月7日までの約3年9ヶ月の間に悪夢のような大虐殺が行われました。その際に、クメール・ルージュは多くの少年兵を使用したことが確認されています。

 

時代が前後しますが、1960年代後半以降に勃発したベトナム戦争に巻き込まれて以来、約30年以上に渡る戦闘状態が続いたカンボジアは、各派によって大量の地雷が使用され、その埋設密度は世界一であると言われています。

一度埋められたら、その効力は50年以上は続くとも言われている地雷。その恒久性も「悪魔の兵器」と呼ばれる所以です。撤去がなされるか、誰かが踏んで爆発しない限り、地雷は埋められた場所に眠り続けるのです。

ポル・ポトはこの地雷に関して

「眠ることもなく、無限の忍耐力を持つ地雷は、完璧な兵士である」 

と発言したとも言われています。(参考記事:Long after war ends, landmines continue to pose a threat | TRT World

地雷原見学の際に発見された地雷 photo by Yuki Nobuoka
地雷原見学の際に発見された地雷 photo by Yuki Nobuoka

カンボジア地雷対策・被害者支援機関(C.M.A.A:Cambodian Mine Action and Victim Assistance Authority)の報告書によると、1979年~2016年の間、地雷や爆発性戦争残存物による被害者は、報告されているだけで合計64,662名に上り、その約20%は女性と子どもです。地雷撤去の推進や、地雷に関する啓発教育によってピーク時に比べて地雷事故の被害者数は減少しているものの、未だ解決されていないのが事実です。

ここで皆さんにご理解いただきたいのは、地雷は過去の問題ではなく、「現在進行形」の問題のひとつであるということです。

村落開発という支援


わたしたちが活動をしている、カンボジアの北西部は最後まで戦場となった場所であり、大量の地雷が埋設されました。2017年度現在、協力団体であるイギリス発祥の地雷撤去団体MAG(Mines Advisory Group)によって、当該地域内で指定された生活圏内の地雷撤去が完了した3ヶ村を対象に、テラ・ルネッサンスでは住民参加型の村落開発支援を実施しています。

多くの農家の人たちは、その収入を換金作物栽培のみに頼っています。2年ほど前から買取価格が下落し、借金に借金を重ねる人も少なくありません。2015年までは1kg=7〜8バーツ(≒25円)だったキャッサバの買取価格が、2015年以降は1kg=3〜4バーツ(≒12円)ほどに下がっています。

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

また、土地を持たない人の多くはその日の食べ物を手に入れるために、日雇い労働をする以外に現金収入を得る手立てがありません。出稼ぎや日雇い労働に、自らの子ども達を連れて一緒に働きに行く人もいます。子供も、小学校高学年ぐらいになると立派な労働力としてみなされるのです。

それは、その子達が教育を受ける機会を損失していることを意味します。経済的な理由によって十分に教育を受けることができなかった子ども達は大人になった時、ある一定の収入を得られる仕事に就くことが難しく、自分の子どもを連れて日雇い労働に出かけます。

この連鎖がなかなか断ち切れないでいるのです。

すべての家族がそうとは言えませんが、対象地域のひとつであるロカブッス村では小学校に入学した子ども達の卒業率は15%ほどです。これは他の農村地域にも当てはまることでしょう。

以前の記事でも書いた通り、最終的に村に住み、村の運営を行なっていくのは村人たちです。わたしたちがやるべきことはその環境を整えることです。具体的には、村人達による月例自治会の開催をサポートし、家庭菜園の推進や家畜・有用昆虫の飼育などを通した収入向上支援、並びに教育施設の建設・整備や小学校での補習授業の実施等による基礎教育支援を行なっています。

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ロカブッス村 自治会の様子 photo by Yuki Nobuoka

「自立と自治」の促進


「自立」「自治」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?

自立という言葉を辞書で引くと、「他への従属から離れて独り立ちすること」とあります。しかし、テラ・ルネッサンスが考える自立とは、周りから自分を切り離して、独りで立つこと(独立)とは違うものだと捉えています。むしろ、周囲との関係性の中で自らの力で自分らしく生きることだと考えています。

自治については、自分の将来や地域の課題、国の未来について主体的に取り組む「責任と権限」を持つことだと捉えています。自らが変革の主体者として、社会の課題に関心を持つことが、自治への第一歩だと考えています。

これらを促進していくことが、最終的には自らの家庭を、村を、国を、そして世界を、自らの手でつくっていくことに繋がります。

そしてわたしたちは、こう信じています。

「ひとり一人に未来をつくる力がある」と。

こちらも合わせて。
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こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

現在、認定NPO法人テラ・ルネッサンスでは、カンボジアで大きく分けて3つのプロジェクトを実施しています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障がい者家族の生計向上支援プロジェクト

前回の記事では、わたしが最もコミットしている③について簡単にご紹介しました。

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今回はこのプロジェクトについて、もう少し踏み込んでご紹介します。ひとつの事例として、国際協力にご関心のある方は特に、お読みください。

 

なぜバッタンバン州カムリエン郡か?


カンボジア北西部タイ国境に位置するこの地域には、大量の地雷が埋設された「K5地雷ベルト」が存在していました。これは、大虐殺を行なったポル・ポト政権以降も続いた内戦時代である1984年後期に、国境を閉ざすために地雷を埋められた地帯です。およそ700㎞の地帯に、200~300万個の地雷が埋設されたと言われています。

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地図のピンが立っている場所がカムリエン郡です。


この地域で生活をする多くの「貧困層」は自身の農地を所有しておらず、地主の小作人として日雇い労働によって日当を稼ぐか、国境を越えて隣国タイでの出稼ぎにより日当を稼ぐ生活をしています。畑地を所有していても、トウモロコシやキャッサバなどの換金作物を栽培する以外に現金収入を得る手段は限られているのです。


 

これは地雷被害者をはじめとした障害者も同様です。しかし、彼ら彼女らの中には、地雷事故によって片手や片足、あるいは両足を失ってしまっている人もいます。そのような人たちは、義足をはめて働くことができても、農作業の労働によって義足と患部が擦れ、その傷を治すためにさらに治療費が必要になるなどのリスクを抱えているのです。


加えて、2015年頃より換金作物の買取価格が下落したことで、農家の収入は激減しました。これは当会でも数年前から危惧していた事態でしたが、これが現実となった今、彼ら彼女らはこの状況を打開するための情報や技術になかなかアクセスできず、借金をしてまで換金作物の栽培を続けているのです。


 

カンボジアは多くのNGOや銀行がマイクロクレジットを提供しており、比較的、借金に対するハードルは低いです。その代わり、月に3%ほどの高い利子がつけられ、一度借りたら借金を返すために新たな借金をする人も少なくありません。そのようにして、雪だるま式に借金が増えていき、担保として居住していた土地を取り上げられてしまう家族がいるのも事実です。そうなれば生活がより一層厳しいものになることは想像に難くありません。


乾燥している大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka
乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

地面に埋められた地雷を含む爆発性戦争残存物の撤去は、ゆっくりとではありますが着実に進んでいます。しかし、例え地雷撤去が完了しても地雷汚染の脅威による影響は大きく、この地域に住む人々は社会経済的に脆弱な環境の中を生きているのです。


 

「生計」の向上


このように、厳しい状況下で生活しているカムリエン郡の障害者家族ですが、決して諦めてはいません。その日の食べ物を買うために、子どもを学校へ通わせるために、明るい未来を手に入れるために、今日も必死に働いています。


テラ・ルネッサンスでは、同地域の障害者家族100家族に対して「生計」向上支援を行います。単なる「収入」向上支援では、彼ら彼女らが生活を改善していくのは難しいのが現実です。


日雇い労働でお金を稼いでも(1日あたり約5ドル)そのほとんどを、食費や借金の返済に使います。自給用の野菜などを栽培せず、換金作物のみを栽培する多くの農家は、お米をはじめとする食材を買って来ざるを得ません。ほぼ毎日、市場へ食材を買いに行く人もいます。その場合、数キロ先にある市場まで移動するためのバイクのガソリン代もかかるのです。


このような状況に対して、こう考えています。


 

いくら収入が増えても、支出がそれ以上にあれば生活は苦しいままです。


逆に、いくら収入が少なくても、支出がそれ以下であれば少しずつでも貯金をしていくことができます。


 

生計向上には「収入を増やす」という視点はもちろん大事です。それと同様に、あるいはそれ以上に「支出を減らす」という視点が大事だと、わたしたちは考えています。


単に、収入向上のための技術を提供するだけではなく、上記のような視点を持つ機会を提供することも、このプロジェクトにおいて非常に重要なポイントとなります。


 

具体的な活動としては、家庭菜園での野菜栽培や鶏、牛、やぎなどの家畜飼育、ハリナシミツバチの養蜂などの栽培・飼育技術訓練の機会を提供し、それらを実践できるような環境を整えていきます。その一環として、隣国タイでの研修があったのです。また、家族の収支バランスやグローバル経済に関するワークショップなどを実施します。


このような形で、少しずつ「収入」と「支出」のバランスを整えていくのです。


また、少しの土地で実践可能な家庭菜園や、家の周りでできる家畜飼育を通して、体の一部とともに喪失しかけてしまった生きがいや自尊心を取り戻すことにも繋がると信じています。これらの複合的な農業技術を提供し、トウモロコシやキャッサバなどの換金作物栽培に依存した生活からの脱却を図ります。そして、自らで管理可能な範囲における持続可能な生活を手に入れられるよう、わたしたちはサポートしていきます。


地雷によって右足を失った男性 photo by Yuki Nobuoka
地雷によって右足を失った男性 photo by Yuki Nobuoka

 

カムリエン郡がひとつのロールモデルとなり、まだ地雷撤去が進んでいない地域が抱える潜在的な課題に対する解決策を、本事業で提示できればと思います。

活動の様子は随時、ご報告していきます。

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