こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。


地雷埋設地域における村落開発支援プロジェクトでは、現在(2018年度時点)カンボジア北西部のバッタンバン州3ヶ村を対象としています。今回は、2014年にプレア・プット村に編入された、山の麓の小さなコミュニティで実施している「やぎ銀行」について。わたしたちもそう呼んでいるので、今回ご紹介するコミュニティは「プレア・プット村(小)」とします。


 


プレア・プット村とは?


以前、基礎教育支援に関連して給食支援を始めたときに書いた記事があります。このなかで、村の状況について簡単に触れていますのでこちらをどうぞ。


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プレア・プット村はカンボジア北西部のタイ国境沿いにあります。ここは「K5地雷ベルト」の中に位置し、この村だけで6,000個以上の地雷が撤去されたそうです。


世界銀行によるとカンボジアの経済成長率は、2017年の6.8%から2018年には6.9%に上昇すると予測されています。ここ数年間はほぼ横ばいではあるものの、高い経済成長率を保っているカンボジアですが、国内全土においてその勢いを感じられるわけではありません。


戦闘に巻き込まれ、大量の地雷が埋められた地域は、都市部の経済発展に取り残されていると言える状況が多々あるのです。


 


収入源の単一化は危険


カンボジア農村地域にも貨幣経済が急速に浸透し、今では現金収入なしでは生き延びるのが難しいほどです。


類似の地域では、自分の土地で換金作物栽培をするケースもかなり多く見られます。しかし、プレア・プット村(小)においては約9割の世帯が農地を持っていません。


「農地を持っていないために、換金作物を栽培できない。でも、現金収入は必要である」


そのため、現金での日当を得られる出稼ぎ労働を主な収入源とせざるを得ないのです。日雇い労働や換金作物栽培それ自体が悪いとは言いません。ただ、問題なのはそれ以外に収入源がないことです。


日雇い労働でよくあるものは、地主が持っているキャッサバやトウモロコシなどの換金作物畑、あるいは、龍眼(リュウガン、ロンガン)という果物に農薬をまくなどの農作業です。これらは季節によって仕事の有無が大きく変動します。一度収穫が終わると、次に栽培する季節になるまでなかなか仕事がありません。


つまり、収入が不安定なのです。



 


そこで、わたしたちは村落開発支援のなかで、収入源の多様化を目標として家庭菜園の推進や家畜飼育の普及をしているのです。


そのなかのひとつがプレア・プット村(小)で実施している「やぎ銀行」です。


 


「やぎ銀行」?


「ヤギ銀行 国際協力」で検索すると、いくつか活動事例が出てきます。ご関心のある方は調べてみてください。


わたしたちが実施しているやぎ銀行のルールは以下の通りです。



  1. 1世帯につき、やぎ3頭(雄1頭、雌2頭)を貸し出す

  2. 子やぎが生まれたら、離乳するまで育ててもらう

  3. 離乳した子やぎが3頭になったら、最初に貸し出した親やぎ3頭を返却してもらう

  4. 次の対象世帯に、返してもらった親やぎ3頭を貸し出す


 


離乳した子やぎ3頭は対象世帯のヤギになります。これを繰り返していくのです。やぎは繁殖力が高く、妊娠・出産のサイクルは半年ほどです。また、初産は1頭のことが多いのですが、基本的には1度の出産に2頭の赤ちゃんを産みます。


やぎ銀行では、次の家族にやぎを貸し出してやぎ飼育を普及し、コミュニティとして家畜資産を確保することを目指しています。そのため、4頭目以上の子やぎも離乳すれば返却してもらうことにしています。


やぎは比較的、病気に強く、カンボジアの農村部に自然に生えている草を食べて成長するので、餌代もほとんどかかりません。先日、村の様子を見に行ったら、近くに自生しているバナナをたらふく食べていました。



 


2巡目に貸出し開始


2017年6月から開始した、プレア・プット村(小)でのやぎ銀行。最初は「やぎを初めて見る」と言う子どもや「やぎは食べたことがない」と言うおっちゃん・おばちゃんたちでした。


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(2017年6月、初めて村にやぎを連れてきたときの様子)


 


しかし、今となってはお世話もお手の物。子どもたちも含め、村の人たち全員でかわいがってくれたおかげで繁殖が進んでいます。昨年度にやぎを貸し出した4世帯のうち、3世帯が返却可能となりました。そのため、今月、親やぎ3頭ずつを返却してもらい、2巡目の世帯に貸し出しを開始しました。


先日開催したやぎの飼育技術に関する訓練にも参加し、かなり積極的に取り組んでくれています。


 


大人のやぎは1頭あたり約160ドル、大きくなるまで育てると200〜250ドルで売ることができます。日雇い労働の収入は5〜7.5ドルほどなので、やぎが収入源のひとつとして確立されると中長期的にまとまった収入を得ることができます。


わたしもカンボジアにいる間、複業としてやぎでも育てたいなあと思う、今日この頃です。


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こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。


以前、Twitterでこんなアンケートをとってみました。






国際協力の支援現場(特に、開発支援)で活動をされた方は、もしかしたら経験があるかもしれません。あるいはビジネスにおいても、対象地域に住んでいる人たちに集まっていただく機会が少なくないでしょう。


例えば、


- 収入向上支援プロジェクトにおいて、事業対象者に職業技術訓練を提供するとき

- 公衆衛生事業にて、村のお母さんたちにマラリア予防の講習会を開くとき

- 住民たちと、コミュニティの問題を出し合い、解決策を考えるミーティングをするとき

- 新商品開発のためのアイディアを集めるために、その地域に住む生産者を対象としたワークショップを開催するとき


などなど。特に「住民参加型のコミュニティ開発」なんかがイメージしやすいかなあと、個人的には。


 




 


JICAの青年海外協力隊として活動をされているラオスのジーコさんも、この「日当問題」で悩まれることが多いようです。


 


事業対象者に集まってもらう機会が何かと多い国際協力の支援現場において、広い意味で「研修」を開催するとき。


果たして、参加者に「日当」を支払うべきなのでしょうか?


 


結果:42%「現金以外を提供する」


先にアンケート結果をお伝えします。202名の方に投票していただきました。


お答えいただいた方々、投票まではいかなかったものの、これを機に少しでも考えてみてくださった方々、ありがとうございました!




 


選択肢として「その他」を含め、上記4つを挙げてみました。


回答として最も多かったのは「現金以外を提供する」が42%。これは少し、意外な結果。


個人的には「支払わないべき」がトップになるかなと予想していました。「事業対象者には直接、現金を手渡してはいけない」という暗黙の了解とも呼べるような考えが広まっているんじゃないかなあ、なんて思っていたからです。


例え話としてよく用いられる「魚と、魚の釣り方の話」にあるように、お腹が空いている人に魚をあげても、一時的な空腹しのぎにしかならない。その人は、お腹が減るたびに誰かに魚をもらい続けなきゃいけなくなる。それは、本当にその人のためになるんだろうか?(これ、後日改めて書こうかと)


といった流れで、教育現場でもしばしば引用されるお話しですね。


つまり、「支援の対象者」には魚(お金)ではなく、魚の釣り方(職業技術など)を伝えるべきだという話から飛躍して、「魚(お金)は手渡すべきじゃない」という認識が一般化されているんじゃないかと。


 


提供するなら「昼食・軽食」?


ここからはコメント付きで回答をしてくださった方々のツイートを紹介しながら。こちらの都合上、すべてをここでご紹介することができず恐縮ですが、ご了承くださいませ。


お寄せいただいたなかで、「日当」として支払うのではなくて、昼食や軽食を提供するのがよいのでは?というご意見が多かった印象です。








 


確かに「お昼ご飯をみんなで食べる」という機会がコミュニケーションの場として、研修への参加意欲を高めてくれることもあると思います。


わたしが滞在しているカンボジアでも、村を歩いているとき「こんにちは」にあたる言葉とセット言われるのはたいてい「ご飯食べた?」あるいは「ご飯食べていきなよ〜」です。こちらのお腹が空いていないことをどれだけ伝えても、半ば強引に(笑)ご飯に誘ってくれます。それぐらい、「誰かと一緒にご飯を食べる」ということを大切にしているんだなあと感じています。


 


Maiさんがご指摘してくださった「日当の支払いがないと人が集まらない」という点。


これはわたしも経験があります。以前に大型の援助機関が支援をしていた地域で、そこに住む人たちに集まってもらおうと声をかけていたとき。


「少額でもお金をもらうか、お米の袋を配らないと、みんな集まらないよ。だって、前に来ていたNGOはそうしてくれたからね」


と言われました。実際、そのときには集まってもらう見返りとしてモノを渡すことはしないという姿勢で動いていたので、数人しか集まってもらえず、しかも来てくれた人たちからも


「で、お金はもらえるの?」


なんて言われたこともあります。


どっちが良いとか、悪いとかじゃなくて。すでに他の援助機関から支援を受けたことのある人々を対象に、異なるスタンスで活動を行なう難しさを感じた瞬間でした。


 


国や地域によっても異なる?




 


国際協力NGO職員として、アフリカ スーダン共和国で駐在員として働かれていた田才諒哉さん。スーダンでは商習慣として、研修を開催する際には、参加者に日当を支払う必要があったようです。


カンボジアでも、政府関係者がフィールドワークに同伴するときには、日当や食事代、宿泊代、交通費(ガソリン代)などを支払う義務があります。わたしも、他の国はそのような決まりがあるのか気になるので、ご存知の方がいらっしゃれば教えていただきたいです。


活動国に住む人たちからしたら、わたしのような人や、外国から来る援助機関はあくまでも「外部者」です。現地の文化や習慣を無視することはできませんね。


 


「本当に意義のある」研修であれば、人は集まる




 


パレスチナにいらっしゃる板倉美聡さんが指摘してくださったポイントは、かなり本質的なものだと思います。個別の世帯ではなく、コミュニティを対象としたものであれば、そもそも研修の存在を知らないというケースも考えられます。


「特定の技術を提供する研修が開かれることを知っているが、参加しない」場合における理由のひとつとして大きなものは、研修(≒提供される技術)が対象者にとって意義をなさないものであること。


楽観的だと指摘されるかもしれませんが、対象者にとって「本当に意義のある」研修/技術であれば、インセンティヴがなくても人は集まるんじゃないかと思います。逆に、人が集まらないのであれば、それは「必要とされていない」ものだとして再考する必要がある。


ただし、その意義を対象の人たちに理解してもらえるような仕掛けを何にもせずに、ただただ「◯◯の技術に関する研修をします、来てください」「ああ、来なかった。じゃあ、これは必要じゃなかったんだな」と短絡的に判断するのは危うさがあるかと。


押し付けはしないんだけれど、その意義を理解し、体感してもらう仕掛けはする必要がありそうですね。


 


じゃあ「意義のある」研修って?


 




 


これ、かなり重要だと思います。


つまり、こちら側が提供する研修/技術を決定するプロセスに、事業対象者らがどれだけ参加したか。どれだけ対象とする人たちの意見に耳を傾けて判断ができたか。


非常に難しい部分ではあるんですが、ここのステップをきちんと踏むことができていれば、自然と参加者は集まってくるはずです。なぜなら、対象者自身が一緒に考えて出した結論だから。そこでオーナーシップが促進されていれば「自分のための研修」という意識を持って、積極的に参加してもらえるんじゃないでしょうか。


 


まとめ


今回の質問を改めて振り返ると




 


わたしがこれに答えるとすれば「できれば現金では支払いたくないが、対象者の状況次第でベターな選択をする」になります。


「プロジェクトを実施する」って言い換えると「現時点において取り組まない問題を決める」ことでもあるんです。限られたリソースのなかで最大限の成果を出すためには、対象となる人や地域のニーズを把握し、実施側の特性や能力を考慮の上に適切な活動範囲を絞り込まなければいけません。


しかし、「収入向上支援」を謳っているからといって、それ以外は何もしなくていいというのもおかしな話です。収入向上さえできれば、それ以外には関与しないというのはどうなんでしょうか。


 


大切なのは「対象地域に住む人/対象者を、一人ひとりの人として」捉えようとすることだと、わたしは思います。例えば、対象者の経済的な収入面だけを切り取って改善をしていっても、収入が増えるにつれて支出がそれ以上に増えていったら・・・?収入向上のための職業技術訓練を受けている期間中に、対象者が産んだ赤ちゃんが大きな病気にかかって多額の現金が必要になったとしたら・・・?


例えばを考え出すときりがありませんが。


 


とにかく、相手を「一人ひとりの人として」包括的な視点で自立に向かえるように関わることが大切なのでは、というのがわたしの考えです。ただし、繰り返しになりますがリソースは限られています。そのなかで、どのようなアプローチができるのか。それによって対象地域/対象者の自立を阻害することにはならないだろうか。などなど、あくまでも対象となる人の視点に立って、総合的に判断をしていく姿勢を大事に活動をしていきたいなあと思います。


 


どれが正解で、どれが不正解かなんてわかりません。より良い社会をつくっていくために、今回のようにまた、みなさんと考える機会を持てると嬉しいです。ご回答いただいた方々、本当にありがとうございました!


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